採血後のしびれ(神経麻痺)について 医療者様へ

しびれ



今回のテーマに関して、
あくまで私一個人の見解であることを
予めご了承願います。

さて、前回、前々回の記事では
様々な採血後障害に冠する情報を更新しました。

しかしこのような内容を発信することで
確実に裁判となり、ふりを被った医療者が未来出てくるような気がするし
その人たちに恨まれて将来背後から刺される可能性があるなと思いました。
なので・・・・・いや撤回しなくてもいいし、事実だしな・・・・・・

今回は、医療者の皆さんが逆にこのようなことに
巻き込まれないようにする方法を書き込みましょう。

というかそもそもですね、
すごく私的意見ですが、採血後障害って、
横断歩道を渡ろうとしたときに正しく青信号で渡っているはずが、
赤信号で止まるべきところを信号無視して突っ込んできて引かれるようなもの

だと思っています。

つまり、
きちんと赤信号では止まるべきだ、とするルールを知った上で、
目の前にある信号が赤になっているのを認識する注意力、
横断している歩行者がいることにしっかりと気づくこと、
これらを守っていれば事故が起きないように
採血後障害に関しても、
何がいけなくて何を避けなくてはいけないのかをしっかり認識していれば
基本的に起きないと思っております。
(勿論例外はあり、CRPSというあらゆる医療行為を行った際に
偶発的に起こる神経障害などは避けられない、
ただし医療者側に落ち度がなければこれは患者側は泣き寝入りしかない)

実際、私自身も採血の猛特訓をしていた頃は
上の中くらいの腕前でした。
最近はめっきり機会が減ったため
中の中ぐらいに腕前が落ちたと思っておりますが
(やば、患者が逃げていく足音がする・・・)
採血後障害にあったことはないです。

ではいかにして採血後障害を避けるのかのこつをあげようかと思います。

1、ただただ選び続ける
基本的に採血をとるときに後ろが詰まってたり、
次の業務に追われることがあるでしょう。
しかし焦って適当に選んだ血管はだいたいはずします。
はずれるようにこの世の中は見えな力が動いています。
大事なのはルーティーンをしっかりとしつつ落ち着いた平常心で
確実にとれると思った血管でない限りは血管を探すようにすべきです。
経験上、焦って「あれここ、いけ・・・・る?あかん手術混んでるしさっさととらな」
と思いながら刺すときは外します。

いやいや、微妙なときでも採血できることあるよ、
と言われるかもしれませんが、それは9割超えてますか?
絶対微妙な気持ちでやってるものは2割以上は外していると思いますし、
それだけ外してたらいずれ痛い目にあうと思いますよ。

2、より安全な場所から
恐らく採血をする時にみなさんが教わるのは肘の付け根からでしょう。
確かにここにある橈側皮静脈は深部から表層にでてくるし、
他の静脈より太目でかつ、ほぼすべての人が持っているので
採血などのときは第一に選ぶでしょう。

しかし、私は選びません。なぜなら解剖を知っているからです。
解剖学的によく先輩から採血をとる場所、
ルートをとる場所で進められながら実は地雷がある場所が2か所あります。
それが肘の付け根親指の付け根です。
この2か所はどちらも神経が近くを通っており、
血管からはずれるとその神経にあたる可能性が高いです。
親指の付け根の場合は感覚神経なので、
まだ感覚障害で済みますが(といってもけっこうな障害です)
肘の付け根だと運動神経も障害される可能性などがあり、
その場合はダイレクトに指の運動機能が障害され、
日常生活に支障をきたす障害として残る危険性があります。

なので私は手背、前腕背側、前腕掌側、
それでもないときに肘、親指の付け根を選ぶ
ようにしております。
患者さんには「掌怖い」「痛そう」とか言われますが
「こっちのほうが麻痺とか神経障害とか指が動かなくなるとかの合併症が少ないですよ」
と同じことを三回言い換えて脅すことで納得させてます。(恐喝ですね)

3、針先の危険性
針先は絶対に動かさない、これに尽きます。
針先はとがっているために実は横に動かすことで
内部の組織を切断できます。
実際、針をうまく使えばナイロン糸なども切れたりしますので、
処置でハサミ(クーパー)などを出すのがめんどくさい・・・げほんゲホン、
すぐに出ないときは代用することもあります。
針先の危険性を認識し、不用意に方向を変えないことです。

その他にも採血後にしっかりと痛みやしびれがないか確認したり
内出血があるところや一度失敗したところは何度も刺さない等ありますが
(一度失敗したりなにかある所は血管が脆弱になっており、
再度の手技により血管の大きな損傷などをきたしかねない)
ある意味一番大事なのは、相手を患者様として見ているか?です。
別に様つけなくていいです。

言いたいのは目の前にいるのは
今日あなたが採血する26人目の患者とかではなく
今日内視鏡検査の術前検査のためにきた●●さんと認識しているかです。
その認識を変えるだけで、気は引き締まり、
おざなりな手技やおざなりな対応はできないでしょう。
あなたにとってはたくさんの中の一人かもしれませんが、
患者さんにとっては採血してくれる●●さんとして見られています。

本当にすばらしい患者さんだと「失敗したか、でもわたしを糧に上達しなよ」
と思っている方もいらっしゃいます。

今でも思い出すだけで涙がでてしまう患者様がいらっしゃります。
自分が研修医1年目の7月で消化器内科を回っていたころ、
当時まだまだ採血の練習ができていなかったのですが
研修医同士の練習ではそこそこに上位のレベルだったため
やや天狗になってしまった時期がありました。

消化器内科にはルート当番という、
腫瘍の方に外来で化学療法をする際に点滴のルートをとる当番がありました。
本来でしたら化学療法をしている人は
長年の闘病生活により血管がやせ細りかつ脆弱になっているためかなり高難度で、
上級医がとることになってたのですが、偶然当時、
内視鏡検査や救急の呼び出しで消化器内科の上の先生が出払っていました。
そこで、ローテーションで回っていた僕が空いていたために、
看護師さんより依頼がありました。

結果は散々で3回、4回、5回、と刺すごとに
どんどん患者さんの腕に内出血が増えていき、
刺すところが徐々になくなっていきました。
本来なら一旦上級医がくるのを待ってから
改めて取ってもらったりするべきだったのですが、
当初失敗を重ねるごとに頭に血が回っていた僕は
取らなくては!と躍起になっていました。

そんな中患者さんからの一言が
「ごめんな、難しい腕で。今日のことで採血とるのが嫌になったりせんといてな」
という言葉でした。今でもあの顔は忘れられません。

長い闘病生活で、明らかに不慣れで下手くそな研修医に刺されまくって
痛いはずなのにそれでも、目の前の研修医の心を気遣うという心持ち。
偶然その方はその心をおっしゃってくださいましたが、
少なくともたくさんいる患者さんの中で全員ではないにせよ
多くの方が同じように思っていると私は思います。

最近は練習器具などができて指される機会が減りましたが
一度刺されてみてください、ルートを失敗されてください。
結構痛いですよ。

自分にとってはたくさんの採血の中のたくさんの失敗の一つですけど、
確実に相手に痛みを与えているという自覚を持って
しっかりと人として向き合い謝罪し真摯に取り組むことが
そのような障害を防ぐ一番の方法だと私は思います。

最後までお読み頂きありがとうございます!
イイネ、コメント、取り上げて欲しいトピックス
また、個別相談等もお待ちしております☆

Dr.ペンギン

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